伊波真理雄 先生
医療法人社団ヒプノシス 雷門メンタルクリニック 院長
RDデイケアセンターに感謝と応援を!
浅草のクリニックで依存症や成人の発達障害を支援して20年経ちました。
依存症との関わりは30年近くなりますが、初めのころに研修していた沖縄の大学病院ではAAについて詳しい人が誰もいませんでした。
初めてビッグブックを手にしたのは、バイト先の民間病院で「アルコール依存について学ぶにはどうすればいいか」とベテラン医師に相談した時です。その先生は自分の机から一冊の厚い本を持ってきて、「こんな活動もあります」とだけ紹介してくれました。(のちにその先生はバーブさんが入院していた国立武蔵病院出身と知りました。)
私はその本を2〜3ページ読んで「なんだか宗教臭いな」と放り投げてしまいました。どうやら自分が有能なカリスマ医師にならないと、酒をやめられない人たちを救えないと思っていたようです。
その後、私は国内外の研修に参加するようになってAAについての知識も少しずつ増えてきましたが、やはり外国から来たプログラムには抵抗があったのか、スポンサーシップやフェローシップという言葉に違和感が拭えず、「いったいそれは何の役に立つんだ?」とさっぱり見当もつきませんでした。
それでも研修中に出会ったAAやNAの回復者に魅力を感じ、導かれるように上京しました。そこで自分の役割を見いだそうともがいてきましたが、12stepプログラムで回復した人びとの自由で穏やかな生き方を目の当たりにして、「こんな回復は自分ごときが指導できるものではない」とすっかり白旗をあげ、カリスマどころか医師としての無力を思い知らされてしまいました。
しかし生活のためとはいえ、専門家としての仕事も捨てきれずにウラオモテのある生き方を続けていたので、「いつか自分の化けの皮が剥がれる」という怖れはなかなか手放せませんでした。そこで「こうなったら自分自身もこっそり12stepを通して成長するしか無い」と企てました。
「援助職の無力」の自助グループで新しい生き方を見いだそうと通い続けましたが、スポンサーとの出会いも少なく、私のような理屈っぽく極端な人間には、緩やかなフェローシップを通しただけの回復は難しかったように思います。今思えば発達障害を持つ人への支援のように、「全体の見通しを立てる」「言葉や考え方の細かい修正を受ける」ことがあれば、ずいぶんと助かっただろうなと考えています。
もちろん時間をかけて学んだことは貴重な経験になりましたし、多くの人との出会いで助けられたことも感謝の想いでいっぱいです。ただ多様化する現代社会において、さまざまな依存に苦しむ人たちが新しい生き方にたどり着くための道順には、いろんな学び方の選択肢があった方が良いようにも思いますし、何よりもRDプログラムを通して自分の回復の道が最善だったことを確信することは、より自由で豊かな人生の支えになることでしょう。
RDデイケアセンターがオープンし、クリニックに訪れる人たちや私の身近で大切な人に紹介して、「初めて自分の人生の疑問が解けた!」と多くの喜びの声を聞くことができました。自分の生きにくさやネガティブな人生観でいきづまっている人たちを、暖かくむかえRDプログラムを手渡しているすべての皆さんに、こころからの感謝と敬意を伝えたいと思います。
追伸:(少し小声ですが)無力ながらも回復を応援してきた私からの思いをこめて、「依存症ってそんなに悪いもんじゃないよ!」